2008年6月24日火曜日

曲がれる、新ババスクラブ


ジェームス・スチュワートは世界で最もバイクさばきが巧いライダーだ。
ジャンプでは離陸までの勢いで前に進んでおり、空中にいる間は加速ができない。でもコースにはボヨ〜ンと無駄に滞空時間の長いジャンプもある。そこはなるべく早く着地して、加速に移りたい。
そこでスクラブと呼ばれるテクニックを使う。ジャンプ直前にバイクを寝かしてサスペンションの反力を逃がし、低い放物線で飛ぶ。このスクラブをポピュラーにしたスチュワートのニックネームを取ってババスクラブとも呼ばれ、全日本選手権でもよく見られるテクニック。
写真のジャンプは、向かって右奥から左手前に曲がりながら飛びます。着地後は画面左へ向かって直線が伸びている。ジャンプを飛ばないのならイン(画面左)を回れますが、かなりスピードを落とすことになる。
一方、スピードを落とさずにジャンプすると、カメラを構えている僕の方に向かって飛んで来て、結果的に曲がれず加速体制に入るのが遅れる。
そこでトップライダー達はスピードをなるべく落とさないようにスクラブで飛んで、すぐに着地して左方向へバイクを曲げて加速する。
しかしスチュワート先生のテクニックは、その先の段階に進んでいました。
彼はなるべく画面右(スチュワートの進行方向では左側)から、ジャンプを横切る様に画面左へと飛ぶ。ジャンプを横切る時にスクラブ気味になるんですが、空中のジャンプ頂点付近でバイクがくる〜と曲がる。その様子はまるでバイクが回っているよう。着地時にはイン側のスポンジバリアに接触しそうなほどで、当然、着地直後から直線的に加速できる。
ちなみにこの写真は今年レースの決勝中です。ビデオの方が分かりやすいと思いますが、あるいは生で見ていたから気がついたのかも。
2005年に空中でバイクを回すテクニックのプロトタイプを見たことがある。この写真と同じ会場(フェニックス)にあった緩く曲がったフープス。空中でバイクの進路を変えようとしてクラッシュ。骨折してそのシーズンを棒にふってしまった。
骨やその他の大事なものと引き換えに、会得したテクニック。そこまでしなくても勝てると思いますが、それでも彼の進化は止まらない。彼はどこまで速くなるんでしょうか?